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バックパッカーの旅Ⅰ(東京~アテネ)

バックパッカーの旅Ⅰ(東京~アテネ)

”アジアを歩く”で紹介された宿

                       ≪十月一日≫        -壱-

   今日は、金曜日という事で、ほとんどの店が閉まっていて用をなさない。
 現地の人に聞きながら、やっと見つけた”post office”は、なるほど閉まっていたが郵便局の前には露店が出ていた。
 切手とか、封筒を売っているのだ。
 かなりの人だかりで、ムンムンしている。

   ここイランでも、切手を貼って窓口に出しても、目の前でスタンプを押さない局員がいる。
 必ずスタンプを目の前で押してもらわないと、切手を狙ってせっかく出した手紙が消える事にもなりかねないので、安心は出来ない。

   同じヒッチハイカーの仲間で、S君はこの方法で見事に詐欺にあった話がある。
 場所はインドで、切手を買おうと10RPを出した。
 ところが、目の前で1RPに掏り返られて、”足りませんよ!”と言われ、呆気にとられて何も言えず、9RPを泣く泣く追加で出したという話だ。

       S君「見ているのを知ってて、無表情で言うもんだから・・・・、こっちは何も言えんかったよ!」
       俺 「騙されるお前が悪い。」

   宿泊費より切手代が何倍も高いのだから、狙いをつけてくるのは分るような気がする。

                       *

   道を歩いていると、よくスタンド喫茶のような店を目にする。
 ジュース類を売っているのだが、インドと同じで、生の果物をそのまま、目の前でミキサーに入れ本物の生のジュースを作ってくれる。
 これが又、冷たくて美味いのなんのって。
 ジュースがこんなに美味いものだったのかと、改めて感心させられてくれる。

   このセファ地区、テヘランのどの辺りに位置しているのか、まるでわからないが、休日なのにそんなに人が多くないのは、中心から外れているからだろうか。
 それにしてもごった返しているのは、”アミール・カビールホテル”の食堂だ。

   毛唐たちは、外に出ようとせず、裸になって日光浴をしたり、トランプに講じたりと実にのんびりとしてくつろいでいる。

       ある日本人曰く「奴ら臆病なんだよ。だから同じ仲間がいるホテルに集まるし、外に出ようとしないんだ。」

   そうかな?
 (臆病なのは、お前ら日本人だろ。毛唐の旅の仕方と日本人の旅のしかたが、根本的に違っているだけなんだよ。)
 そう思いながらも・・。

       俺「なるほど。」

   相槌をうってみせる。
 暫く食堂で暇をつぶす事にした。

   旅行者の半分以上は、若い女性達だ。
 そして、ここからアフガンへ渡る女達は、ここで一緒に旅をしてくれる男を漁り始めるのだ。
 やはり、中近東を女性達だけで、旅しているのに出会ったことがないのは、こういうことなんだろう。
 という事は、ここで遭う女性は割り切って旅をしていると言って良いだろう。

   とにかくこのホテル、”アジアを歩く”とか”一日10㌦で旅する本”に紹介されているせいか、貧乏旅行者ばかりが、入れ替わり立ち代りやってくる。
 若い旅行者ばかりなので、情報は集まるし、荷物は他のホテルと違って安心だし、・・・だから、ホテル側の付け上がりようは相当なもんだ。
 ホテルだけは、自分で探し、情報を得る手段としてこの宿を利用する方が、良いのかも知れない。

                        *

   夕食はホテルの食堂で済ませることにした。
 ソーセージに目玉焼き、ポテト(これが・・硬いのなんのって・・・、目玉焼も油が浮いていて・・わや!)にmilk。
 日本では考えられないほど小食ではあるが、これで十分なのである。

   夜になると、俺の部屋に二人の日本人が尋ねてきた。
 日が変わるまで話し込んだ。
 話の内容は、日本のことではなく、これまで自分の旅してきた様子を、何倍にも誇張して話してくれる。
 まともに聞いていると、皆尊敬に値する人物に見えてくるから、眉唾もんだ。

   そして彼らは、地名とか名所・旧跡のことなどを、実に詳しく知っているかのように話すもんだから、長い夜ではあるが退屈しないで済みそうだ。
 俺自身、そういう話にあまり興味がないもんで、もっぱら聞く側にまわり”フム!フム!へー、すごいね!”などと感心して見せるのだ。

   だんだん疲れてくるが、こんなに遅くまで、日本語を聞くのが久しぶりなもんだからつい付き合ってしまった。
 移動移動で疲れきった頭を休めるのには、良い一日となったようだ。


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